その日稽古場では、衣装合わせの際に撮った写真を皆で見ていた。
あ、岡嶋です。
ほほう、本番では皆こんな風になるのか。そんな中、間違い探しの様に誰かが気付いた。
「あれ?内田さん?これ?」
内田さんはその写真に本番さながらの衣装を着てポーズを決めて、そこまではいいのだか、首に喉をいたわるためのマスクを引っ掛けたまま写っていた。みんな笑ってる。
所謂、ボンミス。
しかしそれで終わらないのが内田さんである。「あ、これ(首にマスク)いいんじゃない?」自分のたまたまミスを前向きに捉える内田さん。なんと、本番の衣装に、マスクを顎に引っ掛けるスタイルがいいのでは?と言う。皆「・・・」。そこで引かないのが淳子である。「だって、風邪ひいた時とか、喉にネギとか巻くじゃな〜い」皆「・・・」。だっての意味が分からない。
沈黙の中、荒木が言った。「だから、何なんですか?!」
21歳の戦いが始まった。この戦争、私は荒木側につこうと思う。本当の21歳だからではない。ジャージ脱ぎっ放しの件を内田さんに執拗に攻められてるからではない。私は、ここ数日、2日に一回は内田さんに「頭がわるい」と言われてるからだ。そんなストレートな爆弾はない。人を龍谷大卒だと思って。立命館卒だからって。因みにに荒木は現役京都府立大生だ。本番までに後何回内田さんに言われるだろうか?
「頭わるいね(高笑い)」
【追伸。】
金替さんは言うことを聞かない。
膝に続いて、首を怪我して流石に心配になったので、「(首)いつ頃直るって言われました(お医者さんに)?」
すると金は・・・「2週間後には、膝と共に治るよ」。
その瞬間、私の頭の中には「風と共に去りぬ」という名画のタイトルが一瞬過ぎったが、(その時点で)2週間後というのはちょうどホール入りの日である。流石、替。何かかっこいいぞ、その絶妙のタイミング。しかしその後、彼は言った。
「・・・まぁ、俺の予想だけどね」。
彼はその後、お医者さんの言うことを聞かず、膝のサポーターを勝手に外して稽古したり、あんまり動かしてはイケないと言われてるのに「下以外、動くわ」と言いながら、首を無駄に動かしたりしている。そんな金替さんを見て、年下で男の俺の中のオカンが疼く。「あんたは言うこと聞かん子やな〜ほんま」。男の母性本能をもくすぐる男。それが金替康博である。言ってみれば、大きな小動物だ。
【追伸2。】
何もおかしな人は出演者ばかりではない。私が注目してるのは、衣装のGさんだ。
初めて、内田さんが着る上着を作って稽古場に持って来た時のこと。彼女はいきなり自分でそれを着始めた。いなや、「あ、内田さんに着て貰えばいいんだ?」いなや、すぐ脱いだ。その間2秒。とんだ奴が現われた。こないだもそうだ。私の着用するズボンのウエストが細くてボタンが締まらなかった。「あれ?俺ここ2・3日で激太り?!」Gは言った。「すいません。私のウエストで作ってしまいました」。G〜。ほんと面白い人ばかりだ。因みにGさんの衣装はどれも素晴らしいのであしからず(数日後、ウエストをジャストサイズに修正し、さらにオプションまで付いてグレードアップして持って来た)。ただ、面白い。
長い手紙になりました。悪霊がもうすぐやってくる、ヤァヤァヤァ。
何卒よろしくお願い致します。
8月26日(日) はれ
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